会社法に準拠した書類保管の適切な方法について解説
2025.11.06
企業が保管する書類にはさまざまなものがあり、書類によっては会社法によって保管義務が定められているケースがあります。
そこで本記事では、会社の書類保管がなぜ会社法によって定められているのか、書類保管サービスをご提供するアズコムデータセキュリティが詳しく解説します。
あわせて、会社法に準拠した書類の保管方法のご紹介もするので、法律を守り、企業としての社会的責任を果たしたいとお考えの方はぜひ参考にしてください。
Contents
なぜ会社法で書類保管について定められているのか
会社法によって書類の保管が定められている理由として、以下の2点が挙げられます。
企業ガバナンスの確保
会社法は、株主の保護や利害関係者(債権者など)の保護を目的として会社がどのような経営判断を行い、その結果どのような財務状態にあるかを記録することを義務付けています。
【株主の保護】
株主総会議事録や決算書類(貸借対照表、損益計算書など)を保管し、株主が会社の財務状況や意思決定プロセスの確認をできるようにします。
これにより、経営陣による独断的な経営や不正を監視するガバナンスが機能するようになります。
【利害関係者(債権者など)の保護】
会社の正確な財務情報が記録されていることにより、投資家や銀行などの債権者が安心して取引できるようになり、信用を担保することが可能です。
権利義務の関係を証明するため
事業に関する重要な書類を一定期間保存することにより、会社が関わった過去の取引や契約について万が一争いが発生した場合に証拠として提示できるようになります。
会社法上の書類の多くは10年間の保存が義務付けられていますが、これは民事上の債権の時効期間(一定の条件で10年)を考慮したものであり、訴訟リスクに備える意味合いが強いです。
会社法が定める適切な書類保管の方法とは
会社法の定めに準じて書類管理をするためには、原則として「真実性」と「検索性」を確保しつつ、法定期間中はいつでも提示できる状態を維持することが求められます。
書類保管の基本原則、また適切な保管方法をご紹介します。
適切な書類保管の基本原則
会社法上の書類(会計帳簿、計算書類、議事録など)の適切な保管方法には、以下の共通する目的があります。
- 真実性の確保:
記録された情報が改ざんされていないこと、また、原本(または原本と同一の効力を持つもの)であること。 - 可視性の確保:
必要な時に明確な状態で画面表示や書面出力ができること。 - 検索性の確保:
必要な書類を速やかに探し出せるように整理・分類されていること。 - 期間の遵守:
会社法や他の法令(税法など)で定められた最も長い期間(多くの場合10年間)保存すること。
紙媒体で保存する場合の適切な方法
会社法上の書類は原則として紙媒体での保存が認められており、実務上は以下の管理が求められます。
| 分類 | 適切な実務対応 | 目的 |
| 整理・分類 | 年度別、種類別(議事録、計算書類など)に明確に分類し、ファイリングする。 | 迅速な検索と誤廃棄防止 |
| 保管場所 | 鍵のかかるキャビネットや書庫で保管し、アクセス権限者を限定する。 | 情報漏洩(セキュリティ)防止 |
| 環境対策 | 耐火金庫や外部の文書保管サービスの利用を検討する。
湿気や水害から保護する。 | 火災・災害による原本毀損の防止 |
| 原本性維持 | 契約書などでは、契印や署名・押印の状態を維持し、改ページや添付書類の欠落がないようにする。 | 書類の効力(原本性)維持 |
| 廃棄 | 法定期間満了後、溶解処理やシュレッダーで確実に破棄し、機密情報を漏洩させない。 | コンプライアンス遵守と情報保護 |
電子媒体(電子データ)で保存する場合の適切な方法
会社法上の書類は、電子帳簿保存法やその他の法令の要件を満たすことで電子データとしての保存が可能す。
特に電子保存を適切に行うには、以下の要件を満たす必要があります。
| 要件 | 適切な実務対応(主に電帳法に準拠) | 目的 |
| 真実性の確保 | タイムスタンプの付与、または訂正・削除の履歴が残るシステムで管理する。 | 改ざん防止とデータの信頼性担保 |
| 検索機能の確保 | 「取引年月日、取引金額、取引先」の3つの要素で検索できる機能を持つこと(特定の要件で不要となる場合あり)。 | 必要な書類を速やかに探し出すため |
| 可視性の確保 | ディスプレイやプリンタなどを備え付け、整然とした明瞭な状態で速やかに確認・出力できるようにすること。 | 閲覧・確認の容易性の確保 |
| 関連書類の備え付け | システムの概要を記載した事務処理規程やマニュアルなどを整備し、運用ルールを明確にする。 | 監査や調査への対応 |
実務で失敗しないための正しい保管方法と管理フロー
書類の保管・管理に関する実務を失敗しないために取り組んでいただきたい保管方法と管理フローをご紹介します。
紙媒体で保管する際の3つのポイント
会社法上では、書類保管は紙媒体とされていることから、以下の3つのポイントをおさえるようにしましょう。
- 分類・ファイリング(年度・種類別)
- セキュリティ対策(施錠、持ち出し管理)
- 環境対策(湿気・火災対策、耐火金庫の利用)
書類管理台帳を作成・活用
「何が」「いつまで」「どこに」あるのか管理する台帳を作成することで、保管している書類からすぐに必要なものを探し出すことができます。
また、会社法では多くの書類に保管期限が定められており、期限が切れた書類は迅速に処分することが必要です。
上記についてしっかり対応するためにも、書類管理台帳には最低でも「種類・保管期限・保管場所」を必ず記載するようにしましょう。
書類廃棄は適切なタイミングで行う
会社法の定めで保管している書類にはさまざまな機密事項が記載されているため、厳重な保管のほかに期限が切れた際の確実な処分も求められます。
書類の処分方法にはシュレッダー処分や焼却処分などがありますが、確実に廃棄するためには溶解処理という方法がおすすめです。
溶解処理は、不要となった書類を撹拌しながら水に溶かすため復元は不可能で、情報漏洩を確実に防ぐことができます。
また、溶解処理後はリサイクル紙として生まれ変わるため、持続可能な資源の創出方法としても近年注目を集めています。
アズコムデータセキュリティでは、法定保存期間中の書類を高度なセキュリティ環境下で保管・管理するサービスをご提供しております。
また、期間満了となった書類の溶解処分、処分後の証明書発行に至るまでのプロセスを一貫してご依頼いただけるため、書類のj紛失による情報漏洩リスクを限界まで低減しながら法令遵守をしていただくことが可能です。
会社法で定められる書類保管方法のルールに背いた場合のリスク
会社法で定められている書類保管方法のルールを破ってしまった場合、どのような罰則が科せられるのでしょうか。
ルール違反をすることで生じるリスクを解説します。
法定の罰則(過料)
会社法(第976条)に基づき、書類の保管義務を怠った場合、会社の役員や清算人に対して100万円以下の過料が科される可能性があります。
| 違反の種類 | 根拠条文(会社法) | 罰則 |
| 会計帳簿等の不保存 | 第432条(会計帳簿の作成・保存) | 100万円以下の過料(第976条第8号) |
| 計算書類等の不備・不保存 | 第442条(計算書類等の保存) | 100万円以下の過料(第976条第2号) |
| 議事録等の不備・不保存 | 株主総会や取締役会等の議事録の保存義務(第318条、第371条など) | 100万円以下の過料(第976条第7号) |
| 備置き義務の懈怠 | 本店・支店に備え置くべき書類(計算書類、株主名簿など)を怠った場合。 | 100万円以下の過料(第976条) |
【この罰則のポイント】
- 過料は刑事罰(罰金)とは異なり行政上の制裁であり、前科はつかない
- この過料は法人ではなく、義務を怠った役員個人に請求される
訴訟・紛争時に不利になる可能性
会社法上の書類(議事録、会計帳簿、重要な事業に関する資料など)は、株主や債権者との紛争、または第三者との訴訟が発生した際に、会社の正当性を主張するための重要な証拠となります。
そのため、もし紛失した場合は次のようなリスクが生じます。
- 証拠の欠如:
書類を紛失・破棄していると、自社の主張を裏付ける証拠がないため、訴訟で不利になり、巨額の損害賠償責任を負うリスクがある - 株主代表訴訟:
経営判断や取引の妥当性を証明できず、株主から代表訴訟を起こされるリスクが高くなる
行政処分が科される
会社法に基づくルールに違反した場合、過料だけでなく次のような行政処分が科せられる可能性もあります。
- 税務リスク:会社法上の書類と重複する税法上の書類(帳簿、証憑類)が適切に保管されていない場合、税務調査で青色申告の承認取り消しや推計課税といった重い処分を受ける可能性がある
- 業務停止命令のリスク:裁判所や行政機関からの資料提出要求に速やかに応じられない場合、業務停止命令を受けるリスクがあり、企業としての信用を失う可能性が高まる
まとめ
会社法によって書類の保管・管理が定められている背景には、企業ガバナンスの確保や権利義務関係の証明などがあり、自社を守るためにも非常に重要な課題です。
しかし、適切に書類を保管・管理して情報漏洩を防ぎつつ、保管期間の過ぎた書類を確実に処分するプロセスを自社で行う場合、保管場所の確保や情報漏洩対策、確実な処分法の確保など多くの手間とコストを必要とします。
このような課題を解決し、法令を遵守して企業としての社会的責任を果たしたいとお悩みの方は、ぜひアズコムデータセキュリティまでご相談ください。
私たちアズコムデータセキュリティは、書類のお預かりから保管・管理まで厳重なセキュリティのもとで対応させていただきます。
また、保管期間の過ぎた書類については溶解処理によって確実に処分するため、復元による情報漏洩を防ぐことも可能です。
書類の保管・管理〜確実な処分までのプロセスを一貫して委託したいという方は、ぜひアズコムデータセキュリティにお任せください。







